古典的な雰囲気を残す最後の時代のリング。
私が初めてポートベローのマーケットに足を運んだのは1993年。まだ高校生の頃に姉が留学していたカンタベリーに押し掛けた時でした。あの頃マーケットに並んでいた物と令和になった現代目にする物ではいつの間にかに随分と変わったと感じています。
ロンドンのマーケットで古い指輪をみると、8割以上はセカンドハンドと呼ばれる私の年齢よりも若いのではと思える1970年代以降の物が占めます。さらにアンティークと呼べる100年以上の前の物というと全体の1割に満たないと思います。残りは1930年代から60年頃の味のある物、それに随分と増えたリプロダクションでしょうか。
アンティークの中でもまさにヴィクトリアンと呼べるものが非常に減っているのを感じています。あんなにたくさんあったヴィクトリア時代の装飾の凝った物たちがいつの間にかに姿を消しつつあります。
まだ多く顔をを出してくれるのは1900年前後の指輪たち、でも、どこか皆同じ顔をしているように映ります。私はその中から個性の富んだデザインや石の奇麗な物を選ぶようにしていますが、古き味わいのある表情をしたリングたちがいなくなってきました。
この指輪はクラスター型でそれほど珍しいデザインをしているわけではないのですが、どこか惹かれるところがあります。イギリスでケースの中で並んだいても一人落ち着いた雰囲気がありました。それは19世紀の佇まいというのでしょうか、ヴィクトリア時代の古き良き手作りの雰囲気を残しているからなのでしょう。
シャンクの内側をみると刻印が入っており、麦の穂を束ねたマーク、.625 と 15 、アルファベットの小文字のtがあります。これによりチェスターで15金を使い1882年に作られたと解ります。
1882年というと日本では上野動物園が開園され、世界史的にはイギリスがエジプトを植民地にした年です。ちなみにバルセロナのサクラダ・ファミリアの建築が始まった年でもあります。
1870年頃からはイギリス製の多くのリングにデイマークが入るようになります。そのため製作年とデザイン、作り方などの比較が容易に可能です。
このリングは1882年ですが1880年代後半以降のリングとは完全に作り方が異なります。
フェイスの裏が閉じられたクローズドセッティングになっており、手彫りが施されたショルダー部分は中空になっています。そのため彫りが入った中に小さな穴があります。これは火をかけた際に爆発させないためのもので、彫りの中にあるので目立ちません。また、中央のサファイアの覆輪留めの留め方を始め、周囲の天然真珠も手彫りでフェイスに窪みを彫りそれにより起こした爪で留めているのが解ります。
こうして作りは手作りの温かみがあり、その後の時代のリングとは異なった表情となって私たちの目に映るのでしょう。
宝石を見ていくとサファイアはオニキスのように深い色の濃紺で、天然真珠はそれぞれが自然に形成された跡がその表情に出ています。一つ表面に小さな傷があるものもありますが入れ替えるよりはこのままの方が雰囲気を保ててると思います。その他状態をみると画像からも解るようにショルダーの部分に小さな傷があります。
もうこの時代にはオープンセッティングも増えていましたが古き時代の作りを残した指輪、ヴィクトリア時代の工房の様子が伝わって来るようです。
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