20世紀初頭の女性参政権運動の際に作られた、優美な曲線が美しいブローチ。
19世紀から続いていた女性参政権運動は19世紀末になり、盛んになります。
その際に運動を行っていた女性たちは自らをサフラジェット(Suffragette 、suffrage は投票権の意味)と称して、運動を展開しました。
その女性たちが身に付けたのがサフラジェットカラーと呼ばれるジュエリーでした。
Give Woman Vote それぞれに頭文字に宝石の色合いを当てはめたのです。
Green White Violet color これに相当したのが、ペリドットのグリーン、パールのホワイト、トルマリンのヴァイオレットカラー。このブローチにもその三種類の宝石が使用されています。
澄んだ色合いのトルマリンは紫色がかった物で、中心に添えられています。左右のペリドットも透明感のある物で、三つの宝石は薄く覆輪留めされており、金の枠がほとんど感じられぬほどに宝石が引き立てられています。恐らくトルマリンがお花をペリドットが葉をイメージしているのでしょう。その植物の茎や蔓の部分はアールヌーヴォーならではの画一的ではない曲線の台座で表現され、ハーフカットされた天然真珠がセットされています。金の台座にすり鉢状の彫り込みを入れ起こされた爪で留められています。真珠に連なるように小さな金の粒も彫金で表現されています。
トルマリンやペリドットがセットされた部分は真珠セットされた部分で表からは隠れる様にカーブしたナイフエッジの金の線でつながれています。さらに表からは見えないようにトルマリンは裏から上部でブリッジワークでも繋がれ、しっかりとした強度を保っています。
裏面下部には15ctという15金を示す刻印が打たれています。金の色合いと細い線にも耐えうる強度を持つことを考慮した金の純度です。
サフラジェットカラーの作品は丁度エドワーディアン期に辺り、左右対称の作品が多くを占めます。そうした中でも優雅な曲線を取り入れたアールヌーヴォーならではの表現は、女性参政権運動の中にも美しさが兼ね備えられていたことを示している希少な作品です。
対照的な色合いが使用されているにもかかわらず、すっきりとまとまり違和感を感じさせないのは、本物のアンティークジュエリーの証でしょう。
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