愛する人への永遠の想いと再生を込めたブローチ
18世紀から19世紀にかけて、髪の毛をジュエリーに封入して身に付けることが流行しました。
18世紀末にはモーニングジュエリーの一種として髪の毛を使って、絵画のように人物や柳の木、骨壺などを表現したジュエリーは流行しています。その後もこの作品のように髪の毛を羽のように束ね表現した物は19世紀後半にまで見られます。
ヘアーコンパートメントというガラス状の蓋が付いたロケット状の構造になった部分に髪の毛を収めた様々なジュエリーが作られました。それらは表側にヘアーを持ってきている物、裏側に抑えめられたもの共にありました。
19世紀になると、故人の髪の毛を収める以外にも愛する家族や恋人に髪の毛を入れた装飾品を贈ることが流行します。けれど、やがて写真が社会にも広まり、愛する人の髪の毛の代わりに写真を入れて身に付けるようになっていき、ヘアーコンパートメントもその役割を終えていきました。
このブローチでは中央に微妙に色の異なる三色の金髪の髪の毛で羽のように束ねられ、途中金線とパールが飾られており、ティアラのようにも見えます。周囲を面取りされ嵌め込まれたオリジナルの硝子からも作品の状態の良好さが伝ってきます。裏側は画像のように蝶番の付いた開閉式になっています。
ヘアーコンパートメントの周囲には上側に天然真珠が飾られ、下側には金の彫り込みが入れられています。よく見ると、エメラルドがセットされた横には蛇の顔があり、自らの尻尾飲み込むような構図になっています。これは古代から見られるウロボロスという象徴図で、「死と再生」、「永遠性」、「循環性」、「無限性」を表していると言われます。蛇は脱皮を繰り返し成長していくことや長期間の飢餓状態にも耐えうることなどから、上記のような意味合いが込められたと考えられています。
このブローチも恐らく故人の死を受け入れ再生を願ったのか、故人への想いの永遠性を託しウロボロスが取り入れられたのでしょう。尚、ヴィクトリア女王が夫アルバート公から送られた婚約指輪はエメラルドの付いた蛇のリングでした。このデザインにはその影響もあるのかもしれません。
外周にはフラットにカットされたガーネットと天然真珠が交互にセットされています。クローズドセッティングでは通常のカットのガーネットをセットすると厚みにより黒く映ります。そのため、厚みを抑えたフラットなカットを入れることにより赤みが感じられました。薄くテーブル面の大きなものが19世紀前期には使用されることが多かったです。
このブローチもガス灯や電灯の普及前に作られた物であり、裏がしっかりと金で覆われたクローズドセッティングに宝石が埋め込まれるようにセットされています。よく見ると上部にセットされているガーネットと天然真珠が大きく、下部に向かうに従い小さい物がセットされたグラデーションになっています。
ブローチの下部には細い鎖から安全ピンのような形状になったストッパーが付いています。
恐らく、そのデザイン、構造、素材などから総合し考察するとジョージアン期もしくはヴィクトリア時代の初めこの頃である1830,40年頃に作られたと推測できます。
ヘアーコンパートメントと天然真珠にガーネット、手彫りによるウロボロスが表現された丁寧に作られた歴史が感じられるブローチです。
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