大きなフェイスの中に四つのダイヤの花が咲き誇る。
リングは場面の大きさが限られるため、ブローチやペンダントのようには意匠をこらしたものは少ないです。
リングのフェイスがそれまでに比べ大きくなる1930年代、そうした中でも特にフェイスが大きいこのリング。その大きさを生かし、フェイスが一つの風景、絵画のようになっています。
四つの大きなダイアモンドは三つがオールドヨーロピアンカット、一番小さい物がキューレットのないトランジッションカットが施されています。添えぞれは細やかなミル打ちで留められています。それぞれの大きさはゲージで測ったところ、凡そ0.5カラット、0.45カラット、0.3カラット、0.25カラットほどです。
フェイスの表面には薄くプラチナが使われており、細やかなミル打ちや非常に細く精確な透かし彫りを可能としています。フェイスの側面から裏面、シャンクはホワイトゴールドが使用されています。
エドワーディアン期から1920年代前半にはプラチナ・フロント・ゴールドバックと呼ばれるダイアモンドがセットされている表側にはプラチナを裏面や側面はイエローゴールドを使うことが一般的ででした。その後、1930年頃にはイエローゴールドに代わりより作品全体が白さが際立つようにホワイトゴールドバックで作られるものが増えます。プラチナとホワイトゴールドでは白さが微妙に異なります。そのため、ルーペを使い側面をよく見ると、プラチナとホワイトゴールドが合わしてあるのが微かに解ります。ロジウムメッキのしていないこの時代のホワイトゴールドは若干黄色く映ることがあり、それが判断の材料になります。
このリングのシャンクには585という刻印が打たれており、ドイツもしくはオーストリアの物だと判断できます。1920年代、30年代にはドイツやオーストリアでは極小のミルグレインや精確な透かしが施された優れた作品が作られています。もちろん、それ以外の品質の低い物が大半でしたが、中にはこのリングのようにエドワーディアン期やベルエポック期のイギリスやフランスのジュエリーにも見劣りしない作品もあります。
大きな場面の物になると、同じ時代のブローチは製作数や残存数も多いですが、こうしたリングはやはり少なく、当時でも特別に作られた物なのでしょう。四つのダイアモンドの周囲にはプラチナ彫り出し小さな粒を作り、その周囲に極小のミルグレインが施された花弁が飾られています。また、透かし部分はその花の茎や葉を表しており、エッジには全て同様に極小のミルグレインが打たれています。空いた空間には彫り起こされた爪により留められたローズカットのダイアモンドが光を添えています。ダイヤのセットできない空白部分には小さな粒が爪と同じように彫り起こされ、プラチナ小さな粒となり、ダイヤやミルグレインと共に反射光を放ちます。フェイス全体が隙間なく細工が施されているため、全体が白い光の花々が咲き誇るようにです。花畑の景色が広がっていくようです。
ショルダーには左右それぞれ四つのローズカットのダイアモンドが埋め込まれるように爪留めされています。このショルダーの細工はフェイスが自然にシャンクに繋がる効果を生み、指に嵌めた際には、シャンクが表面から見えないようになっています。また、装飾されたショルダーの下は左右の指がぶつからないように窪み、そのまま緩やかなカーブを描き、シャンクにつながっていきます。そのため、これだけフェイスが大きいにもかかわらず、実際に嵌めてもストレスが感じられません。それは、シャンクが現代のリングに比べ、フェイスの割に細く作られていることにもよるでしょう。
また、フェイスの高さが低いため、指輪が周りにくく、安定します。一見大きなフェイスのため、ぶつかりやすい感じられます。けれど、現代の同様のフェイスのリングに比べると、高さも抑えられていることもあり、それほど邪魔にならず、使い易いです。四つのダイアモンドが爪留めではなくミル留めにされていることも引っ掛かることを予防しています。
リングはブローチやペンダントなどとは異なり、その美しさを身に着けている本品が楽しめるジュエリーです。このリングも指に嵌められた姿を見る度にその美しさ、白輝くダイヤとプラチナの花の風景が心を楽しませてくれるようです。
大振りのリングになると細工が雑になる物が多い中、細部までもきめ細やかに職人が技術を費やした指輪。希少性に富んだ逸品です。
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