巨匠ラファエロの作品を優しい表情にアレンジしたエナメルの逸品
「小椅子の聖母」は現在フィレンツのピッティ宮殿パラティ―ナ美術館に飾られています。ルネサンスを代表する画家ラファエロ・サンティによって1513~1514年頃に描かれました。ローマ時代と言われるラファエロのキャリアの後半のローマで活躍した時代に製作された作品です。
聖母は青色の衣装だけでなく暖色系の赤色の上着や赤い模様の入った緑色のスカーフを纏い、幼子イエスもまた、暖色系の黄色の服を羽織っています。それまでのラファエロ自身の聖母子像やレオナルドダヴィンチを初めてとする先駆者たちの聖母子像に比べても多色で絵全体からあたたかな温もりのようなものが感じられます。
尚、聖母マリアが青いの大きな生地を纏っているのは、青色が天の真実を示すマリアのアトリビュートだからです。また、赤色の服は神の慈愛を象徴しています。原画が描かれた16世紀の当時、青色はヨーロッパでは使用され始めたばかりのラピスを使った顔料によるもので、非常に高価でした。希少で高価な顔料を使用すること自体が聖母マリアへの信仰と畏敬の表れであったのでしょう。
構図は椅子に腰かけ幼子イエスを抱く聖母、その横に子供の姿で表現されている洗礼者ヨハネが二人を拝むように見つめた姿で描かれています。聖母マリアとヨハネの頭部には光輪が描かれ、イエスはその他の聖人と区別し、イエスの神聖を表現するため自身が光を放っていることを示す光の線が背後に描かれています。
私もこれまで多くの聖母子像の陶板やエナメルの作品を扱ってきましたが、その中でも秀でて絵が上手い作品です。状態も大変よく表面に擦り傷などもありません。そして、原画と比べると描かれている三人共顔の表情が優しい笑顔になっていることが特徴でしょう。
陶板に比べエナメルは光沢があり色彩が明るく鮮やかです。その上、細やかな線も丁寧に描かれています。色合いも単調ではなく、肌や衣服の色のグラデーションが見事に表現され立体感が感じられます。
裏面をみると、水色のエナメルで覆われています。これは焼成する際に裏側にもエナメルを掛けることにより、板が熱で変形することを防ぐためです。
18金のフレームは上下に聖母マリアのアトリビュートである百合が立体的に飾られています。この飾りや周囲の枠も中空になっていますが、しっかりと裏打ちがされ、同時代の中空の金細工の中ではかなり厚みのある作りになっています。エナメル本体を留める爪は花弁が連続したような形になっており、表面には手彫りで唐草模様が彫り込まれています。針と受けも同様に18金で作られています。
エナメルは焼成時に縮むため、火の加減を誤ると歪みが生じます。また、絵が描いた際よりも縮みます。そのためきれいな絵付けがしてある作品でも顔だけが崩れてしまっている物も多いです。そうした中、見事なまでに美しい表情で描かれたこの作品は大変優れた逸品と言えるでしょう。熟練した職人の経験とセンスにより生み出されたのが伝わってきます。
コートやセーター、スカーフなどに合わせて身に付けるとその鮮やかな色彩がより一層引き立つことでしょう。普段は小さな額に入れて飾る小さなアート作品として飾るのも宜しいかもしれません。
近年では稀にみる完成度の高いエナメルの逸品です。
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