19世紀に古代ローマの遺跡フォロロマーノを見た英国貴族が持ち帰った品か。
モザイクは古代メソポタミアで始まり、その後、ローマ、ビザンチン、イタリアと受け継がれていきました。教会の壁や床を飾る装飾であったモザイクが18世紀のグランドツアーの流行共に、宝飾品としても作られるようになります。
ギリシャ神話の一場面や花や昆虫、古代ローマの遺跡群などがモチーフとなり、イギリスやフランスなどから訪れた裕福な貴族の子弟向けに製造されました。私もコロナ前にローマを訪れ、フォロロマーノを散策しましたが、今も、その光景はグランドツアーで訪れた貴族たちが見た風景とほとんど変わりはありませんでした。
写真も普及しておらず、ましてカラー写真など無かったこの時代、風景の一場面をモザイクならではの細かさで多色に表現した物はきっと貴族たちの心を捉えたでしょう。モザイクはナポリのカメオ、ヴェネチアのヴェネチアンガラス、フィレンツェのピエトロデューラと並ぶ、ローマの特産品なっていました。
通常は黒いガラスを台座に使うことが多いのですが、このブローチには濃紺の不透明な硝子が使用されています。この硝子の台座にセメントを敷き、その上にまずは空の部分には横幅0.8mm縦幅0.2mm程のテセレと呼ばれる小さな硝子片を敷き詰めていっています。薄い水色から桃色に変わっていくグラデーションが見事です。まるで今まさに夜が明けたようです。さらに、大地を表すところなどはもっと小さなテセレが使用されています。列柱には陰影出すために三色の色合いになった縦に長いテセレも使用されています。様々な色合い、形のテセレを組み合わすことにより、風景を形作っています。
平たく並べられたモザイクの表面を指でなぞっても一つ一つのテセレの凹凸が感じられず、見事に敷き詰められていることが伝わります。周囲を囲む青いガラスの表面には擦り傷のような微細な傷がありますが、モザイク部分には抜け落ちた部分も一切なく状態は良好です。表面の傷はヒビなどではなく、作品に大きなダメージとなっているわけではないので150年程の時を越えてきた風合いとして考えていただければと思います。
最近はこうした工芸的なアンティークジュエリーがめっきり減りました。私はアンティークジュエリーの魅力はやはり職人技にあると思います。まさにモザイクは素材の価値ではなく、職人の技術と根気、時間が費やされて出来上がった装飾品です。こうした作品が年々減ってきていることを感じると共に、今まだ出会えることに感謝しています。
銀のフレームはロープ模様で古典的な雰囲気が出され、濃紺の硝子を変わった爪の形状で留めています。濃紺の硝子の台は表側よりも裏側が大きくなる側面から見ると台形のような形になっているため、爪を表面に被すことなくとも本体がフレームから抜け落ちることがありません。
身に付けると、濃紺と銀のフレームに囲まれた多色のモザイクは遠くから見てもはっきりと古代ローマの列柱が浮かび上がります。使い易い大きさのモザイクのブローチです。
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