フィレンツェで作られた天然石で作られたモザイクの中でも特別な逸品
私もこれまでいくつものフローレンスモザイクを扱ってきましたが、その中でも最も美しいと呼べる作品の一つです。
現地イタリアではフローレンスモザイクはピエトロデューラという名で呼ばれています。下地にスレイトと呼ばれる石を敷き、その上に様々な色合いの大理石を始めとする天然石を並べ、組み合わせています。まずは、図柄を決め、切り抜いた下紙を背景となっている黒大理石に乗せ、その図柄を写します。次に同様に他の埋め込むパーツにも下紙を乗せ、石に図柄を写します。その後、それぞれの石を切り抜いていきます。
切り抜く際には、まずは糸鋸を使い切り抜き、次に石が隙間なく嵌め込めるように、微妙なサイズを調整を行います。実際に石と石を合わせる段階になると、僅かな隙間も空かないように、ワイヤーを使い、石を磨いていきます。これにより様々な色合いの石を組み合わせても、隙間なく見事に絵のような表現がなされます。最後にスレイトの上にセメントを敷き、その上にそれぞれの石を敷き詰めます。セメントが乾いた後、表面を凹凸が無くなるまで、根気よく磨き抜きます。フレームを付け完成です。
現代でもフローレンスモザイクはフィレンツェで製造されていますが、ここまで完成度の高い作品を眼にすることはありません。また、当時、高価であったフィレンツェ製のフローレンスモザイクを模し、イギリスでも作られていました。そうした作品は、石と石の間に隙間があり、完成度の違いに差があり判断できます。
フローレンスモザイクの中でも特に優れた作品は、一見単調になりがちな図柄をそれぞれの石が持つ、微妙な色の変化を生かすことにより、奥行きを感じられるようにしています。
この作品のモチーフとなっている花束の葉も薄い色合いや黄色みがかった部分から濃い色合いへと変化する色のグラデーションを生かし、葉に陰影を生み出しています。また、隙間がほとんどないので、光の当て方を変えてみないと気付けないのですが、葉が丸まるように折れ曲がっているところに僅かに色の異なる石を嵌め込んでいます。また、茎の断面となる先端にも明るい色合いの石が埋め込まれています。
花々を束ねているリボンには孔雀石が使われ、この石ならではの積層の色の変化を生かしリボンに立体感を与えています。孔雀石はマラカイトとも呼ばれる石で、積層になった緑の色合いが美しい石です。
尚、フローレンスモザイクで見られる鈴蘭は通常、白い花だけなのですが、この作品では、花のがく片までが表現されており、茎の先端に付く三つの蕾は純白ではなく薄い灰色の石が嵌め込まれ、様々な変化が見て取れます。
状態も大変良好で、嵌め込まれている全ての石に破損やヒビが無く、表面にも擦り傷などもありません。現在流通しているアンティークのフローレンスモザイクのほとんどは傷や割れているものが多く、こうした良好な状態の物は一割ほどしかないでしょう。その中でもこれだけの手の込んだ作品は、ここ10年は私も出会っていませんでした。
素晴らしい作品に合わせ、フレームも手の込んだ物が合わされています。形と色合いの揃った天然無核真珠はハーフカットされ高さを抑えセットされています。真珠層のみでできている無核真珠は長い月日を経ても褪せることなく美しい輝きを放っています。これだけの同じ大きさや色合いの天然真珠を揃えることは当時でも大変なことでした。また、フローレンスモザイクの黒大理石の背景を意識してか真珠と真珠の間には黒いエナメルが金に彫られた溝に焼き付けされています。この黒いエナメルがあることにより真珠の白さと金の色合いをより引き立てています。
さらに側面をみると、連続した透かし彫りが施されており、裏側には金の枠が付けられています。手に取るとその重さが伝わるように、当時のフレームとしては贅沢に金が使用され、厚みがあるのが判ります。針や受けもオリジナルの物が残っており、金で作られています。針の根元をフレームとつなぐ金具にもデザイン性が感じられます。
非の打ち所がない作りと状態の最高級のフローレンスモザイクの逸品です。
胸元にフィレンツェから届いた花々が咲き誇ります。
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