ゼウスとその聖獣である鷲がモチーフとなった迫力のあるカメオ
数々のカメオを取り扱ってきましたが、私も初めて目にした構図のカメオです。
ギリシャ神話の最高神ゼウスの正面を見据えた頭部とその下には羽を広げ天界から地上を見下ろすような鷲が彫り上げられています。そして、ルーペ―を使いよく見ると、周囲は蛇が囲んでおり、蛇は自らの尾を咥える姿。つまり、ウロボロスになっています。
ゼウスの表情は威厳に満ちており、その目は全ての宇宙を見通すようにも感じられます。鼻筋はしっかりと通っており、顔の彫りの深さが伝わってきます。口髭や顎髭は豊かさを象徴しているようで、髪の毛と共にふんわりとした膨らみが感じられます。頭部の髪の毛は前髪と後ろ髪が別々に彫られ、遠近感が感じられます。まさに、オリンポスにあった伝説のゼウス像もこうした表情をしていたのでは想像してしまいます。
上手く貝の凹凸を生かして彫っています。貝の角の分を利用しているためでしょう。白い部分に特に厚みがあり、ゼウスは光り輝くように純白に表現されています。堂々と広げられた翼はゼウスよりも後方に位置し、白い層を薄く彫り込んでいるため、ゼウスがより一層前方に浮き上がっています。羽の一つ一つまで丁寧に彫り込まれています。鷲の頭部も前方に出ており、猛々しい表情をしています。限られた厚みで脚も見事に立体的に表現しており、蛇の胴体を掴んでいます。
先にも触れましたように蛇はゼウスの頭上で自らの尾を咥えた姿になったウロボロスになっており、「永遠」、「死と再生」、「不老不死」の象徴しています。古代ヘレニズム文化圏においてウロボロスは取り入れられており、そのため、ゼウスと共に表現されているのでしょう。
フレームはロープ模様の周囲にゼウスの聖木であるオークの葉が六枚飾られています。内枠はゴールドプレートで出来ており、外枠とオークの葉、18金で作られています。レポゼワークで打ち出された葉の表面には脈が彫り込まれています。外枠は断面が半円のパイプ状になっており、裏側は平たい構造になっています。
恐らく、イタリアで製作された際についていたロープ模様のフレームがあり、グランドツアーなどで訪れたイギリス人が故郷に持ち帰り、その威厳に満ちたカメオに合わせて外枠を作らせたのでしょう。裏側をみると内枠と外枠をハンダで繋いだ跡が解ります。オークの葉や外枠の作りは19世紀のものであり、同じ時代の物といえます。
左側にはストッパー用のチェーンが付いており、先端に安全ピンのような金具があります。これは本体の針が外れてしまった際に、予備の金具として落下を防ぐものです。針やこのストッパーの金具もゴールドプレートです。
正面彫りのカメオ自体が少なく、その中でも非常に珍しい構図のカメオ。まず再び出会うことはない作品でしょう。イタリアを訪れたイギリス貴族がその彫りに魅了されて持ち帰ってきた光景が脳裏に浮かぶようです。
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