希少石ピンクトパーズを使用したヴィクトリア時代中期のブローチ
希少石であるピンクトパーズはジョージアン期からヴィクトリア時代中期にかけて人気を博した宝石でした。現代でも天然のものは少なく、多くはブラジル産の熱処理加工した物です。それらは褐色がかった色合いを帯びており、ピンクダイアモンドに似た色目です。スリランカで産出されたものは、天然でピンクの色合いを帯びており、バイオレット色がかっています。このブローチにセットされているピンクトパーズはピンクの色合いも濃く、僅かにバイオレット色を感じられる天然のものです。
19世紀にはピンクトパーズは高価な宝石であったため、色の薄い物を濃く見せる効果を狙い、クローズドセッティングされた金属の台座と宝石との間にピンクの色付けをしたフォイルを敷くことが多用されました。それは薄めのピンクトパーズにだけではなく、無職のトパーズや水晶をセットしたものに下に色付けされた箔を敷いたものもあり、ピンクトパーズに似せ作られました。
このブローチも宝石鑑別に出した際に、一度目はクローズドセッティングになっているため、鑑別不能として戻ってきました。そのため、職人に一度、宝石を外してもらった上で鑑別所に改めて診てもらったところ、無事ピンクトパーズとクリソライトとして鑑別されました。
そうした希少なピンクトパーズは葡萄の実として表現されています。ピンクトパーズが赤ワイン用の黒葡萄として、白ワインの色合いを連想させるクリソライトが白葡萄をしてセットされているのでしょう。
葡萄の葉の作りも素晴らしいです。レポゼワークと呼ばれる打ち出し細工でふくよかな丸みを出しその上に脈などを彫り込み生命感を醸し出しています。茎の切れ端なども丁寧に作られています。
尚、このブローチが1860年頃と判るのは、セットされている石の留め方が覆輪留めと薄い板状の爪になっていること、周囲を飾るフィリグリーと呼ばれる金線糸細工、裏面のヘアーコンパートメントの作りなどを総合してです。
フィリグリーは長い時の間にどこかが抜けてしまったいるもののも多いのですが、この蠟付けされたフィリグリーは一つも抜け落ちることなく、きれいな状態を保っています。
ヘアーコンパートメントとはブローチやペンダント、リングの裏面などにガラスを嵌め込みその中に髪の毛を収めた作りの事を指します。かつてイギリスが隆盛を極めたアンティークジュエリーの時代、ヴィクトリア女王が家族に自分の髪の毛を収めたジュエリーを贈りました。それを見習い19世紀には家族や恋人に髪の毛を収めたジュエリーを贈り身に着けることが流行しました。この作品もその一つで、裏面に金髪と茶色のヘアーをきれいに丸め、羽根のように丸めた金線と共にセットされています。
豊かさの象徴である葡萄をモチーフとしたブローチ、きっと家族の繁栄を願って作られた作品なのでしょう。当店においても久しぶりに手に入ったピンクトパーズの優品です。こうしたヴィクトリア時代らしいジュエリーで良好な状態の物は本当に数が減ってきました。これから出会う数もますます減ってくることでしょう。
配送日時につきましては、在庫確認後のご連絡でご要望を承ります。
配送ラベルに記載する商品名・送り主名につきまして、ご要望があります際には最大限の配慮をさせていただきますのでお気軽にご連絡ください。
当店では以下のお支払方法をご利用いただけます。
*お客様のご都合にあわせて商品お申し込みの際にご指定ください。
*銀行振り込み手数料、代引き手数料の決済手数料はご負担いただいております。
*7日以内にご入金・お手続きが確認できない場合、キャンセル扱いとさせていただく場合がございます。