ヨーロッパのマーケットからもほとんど消えた大振りの三層彫りカメオ。
葡萄を髪飾りとし、豊穣の杖テュルソスが背中越しに見える姿は豊穣と葡萄酒の神バッカスでしょう。後ろ髪が長いので、一見巫女であるバカンテを連想される方も多いでしょうが、その力のある目線と凛々しい表情は女性の物ではなく、まさにバッカスの物でしょう。尚、バッカスは古代ギリシャ・ローマの石像やその後の絵画等においても後ろ髪が長い姿で表現されることが多いです。
ちなみにギリシャ神話ではディオニュソスと呼ばれ、カメオ製造の産地であったイタリアのローマ神話ではバッカスになります。遠く東方の神であり、各地にブドウ栽培とワインの製造法を伝授してまわったと言われています。
テュルソスは先端に松かさが付いた杖で、大地に挿すと土地を豊かにし豊作をもたらすと言われていました。また、多産も人々にもたらしてくれるとも信じられました。
このカメオはやはりコロニアル貝のオレンジ色の斑点をうまく生かし、葡萄や生地の部分にはオレンジの層を残し顔や首筋などは純白の層を磨き上げ艶やかな肌を表現しています。また、背景には珍しいグレーの層を利用しています。あまり見けることのないグレーの層は、裏を見ると白い貝が見えるように、薄いグレーの層を表に見事に残しています。
通常は背景はオレンジや茶色の層が多いので、こうしたグレーを背景にしているカメオは非常に珍しいです。
分厚い貝を使用しているため、彫りには陰影があり、バッカスの姿がはっきりと浮かび上がっています。実際の厚み以上に遥かにモチーフが浮き上がり、立体感が感じられます。
カメオ本体のサイズが縦52.7mm、横43mmとかなり大振りです。かつてはこうしたサイズの大きいカメオもロンドンやパリでも見かけたのですが、今ではヨーロッパのマーケットでも、ほとんど出会うことが無くなってしまいました。
全てのアンティークジュエリーに共通して言えることですが、サイズの大きい物が一つ作られたとするとそれに近いデザインの物の小さい物はその10倍以上は作られていました。けれど世界中のアンティークコレクターはどうせならばそうした大きい物を欲する傾向があります。もともと作られた数が少なかったサイズの大きい物は今では世界中に散ってしまい、なかなか出てくることがないのが実情です。
久し振りに入手した大振りのシェルカメオです。
フレームには金綱細工とその周囲に透かしの花模様の金枠が使われています。
四点で内枠に溶接していましたが、一点が外れてしまっています。恐らく長い月日の中で無理に力を掛けたため、一か所が外れたのでしょう。職人に確認した所、これで外れることはないのでこのままにしておいた方が良いということでした。ご心配であれば今はレーザーがあるので、溶接も可能です。留め具は昔のストッパーが付いたものが使用されています。この留め具の構造から恐らくフレームは20世紀初期に作られた物だと推測できます。19世紀の末頃に彫られたカメオのルースを受け継いだ人が特別に枠をこしらえたのでしょう。
バッカスの神々しい表情とそれを引き立てる三層彫りの立体的な彫りが印象的な希少な大振りのカメオです。コートの右胸元やセーターやシャツの中央に付けて楽しむと宜しいかと思います。
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