鳩と百合、勿忘草をモチーフとしたローマで19世紀に作られたモザイク作品。
二匹の鳩の澄んだ目を見ていると、この作品を作った職人が、これを求めた人が、受け継いだ人が、純粋な心を持っていたことが伝わってきます。
モザイクはテセレと呼ばれる小さなガラス片をセメントや漆喰を敷いた板の上にピンセットを使い敷き詰めていき作っていきます。
19世紀にはローマのスペイン広場からバチカンに向かってたくさんのモザイクを売るお店が並んでいたそうです。店の奥は工房になっており、職人たちが一つ一つ手作業で製作していました。そうしたモザイクの作品たちををイタリア各地の人々はもちろん、イギリスやフランスなど各国からローマを訪れた旅行者たちが自国へ持ち帰りました。
しかし、最近ローマの街を歩いたには、そうしたモザイクを作り販売する工房は一つも見つかりませんでした。私の目に入ってきたのは、お土産屋の片隅に並べられた大量生産の単純なモザイクだけでした。
現在のモザイクと何が違うといえば、大きく二つの違いがあります。
一つ目は細かさ。一つ一つのテセレ大きさが異なります。これは職人の技術とかけている時間の違いによります。そのため昔の作品は絵のようにも見えます。
二つの目は色です。昔のモザイクは中間色の微妙な色合いを豊富に使っています。それに対し、現代では決まりきった現色を使って作られています。
この二つの違いにより昔のモザイクは小さな絵画のような雰囲気が感じられます。
この作品の鳩も白だけでなく、微妙な紫やピンク、肌色など様々な中間色のテセレで構成されています。勿忘草の花弁も水色、紺色、グレーがかった白などを利用することにより、単調さを感じさせません。
白い百合は花弁が六つあり勿忘草と区別されています。キリスト教では百合は聖母マリアの処女性や無原罪を象徴しています。また、球根が毎年芽を出すことから再生、永遠の命を表すともされています。
鳩もキリスト教のシンボルの一つであり、精霊の象徴であり、平和の使者です。また、カタコンべに描かれた際には神の救済を意味していました。
鳩の頭部は一つのモザイクガラスからできています。このモザイク硝子の技法は古代エジプトで生み出され古代ローマに受け継がれました。しかし、その後中世には途絶え、17世紀のベネチアの職人が復活させるまで作られなかった高い技術を要するものでした。黒い瞳の中に白く光る部分があり、その周囲を薄紫の層が巻き下には水色、上には微妙な薄紫が載っています。そして頭部の白が来ます。一体化されている嘴は実は三色で構成されています。上部が黄色、中に黒、下は辛子色。細部まで凝った微妙な色の変化が鳩に生命を吹き込んでいるのを感じます。
モザイクの状態は非常に良好です。あえて言えば右上の勿忘草の白い花弁の一部が少し欠けているとことでしょうか。
その他には、私もこのページを書くために改めてルーペで見るまでは気付かなかったのですが、周囲のフレームの銀の輪が四か所採れているところがあります。直すことも可能ですが、薄くゴールドプレートを施されているため、火を当てると色が変わるため、ここはこのままの状態にしている方が宜しいかと思います。身に着けていると全く目立たちません。
フレームは19世紀の他の作品では見かけないような凝ったデザインの物です。ルネッサンス期のジュエリーに見られるようなものでモザイクの雰囲気に非常にマッチしています。
裏をみると針が縦に付けられています。それによりお辞儀することなく身に着けられます。恐らく加工されていない状態で持ち帰れたものに自国で針と受けを付けたのかと思います。そのためハンダで付けられています。
モザイクを使ったジュエリーはここ15年くらいで急激にマーケットから消えました。
石油価格の上昇により中東で富裕層が増え、そうした中東からの人々がモザイクを買い始めたのが15年程前頃、その後、ここ数年は中国人も買うようになり、さらにマーケットで見かけることが減りました。困ったことに中国人たちは壊れていようが高かろうがモザイクを買っていくので物自体が無くなりかけていると感じます。
様々なモザイクを見てきましたが、鳩の優しい表情に癒される特別な作品です。
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